去年、
アラン・アーキンがアカデミー助演男優賞を受賞した、小品ながらとても評判の良かった
「リトル・ミス・サンシャイン」。見逃していましたが、ようやく見ることができました。
みんなそれぞれどこか壊れていたり病んでいるような、心がなんとなくバラバラなフーヴァー家の人々。娘のオリーブが「美少女コンテスト」に繰り上げ当選したため、カリフォルニアで行われる本大会に出場できることになり、一家でおんぼろバスに乗り、アメリカ横断の旅に出るロードムービーです。
まず意外だったのは、麻薬中毒の不良おじいちゃん役のアラン・アーキンの出番が異様に少ないこと!正直、「えっっ!これで助演男優賞なの・・・?」と戸惑ったのは私だけではないでしょう(笑)。そんなにインパクトのある演技をしているわけでも、見せ場があるわけでもないんですよね。面白いですね。あのナチュラル感が返って良かったのかな。
主人公の
オリーブ(アビゲイル・ブレスリン)は、ビン底メガネにぷっくりお腹のアラレちゃんみたいな女の子。一見
「あんた本気でミスコン出るの?」と心配したくなる風貌ながら、憎めない天然素材の可愛らしさがとてもチャーミング。
この美少女コンテストの本番のシーンが、一応映画のハイライトなんですが、出場する美少女(?)たちが揃いも揃ってキモイ(笑)。歯むき出して笑ってるし。いわゆるジョンベネちゃん風のエグイ子供がウヨウヨ出てきます。
そんな中で、いかにもフツーっぽいオリーブが、実は一番自然で可愛く見えました。彼女がステージ上で披露するダンスが・・・(笑)。はじけてます。ゲラゲラ笑いました。ここがやっぱりキモですね。
人生を勝ち馬と負け犬の2通りに分けて、成功するための自己啓発本を出版しようと躍起になっているお父さん(
グレッグ・キニア)や、一番ノーマルな感じだけど、まともな食事を作らないお母さん(
トニ・コレット)、心を閉ざして一切言葉を発しない、筋トレマニアのお兄ちゃん(
ポール・ダノ)に、自殺未遂を起こしたゲイの叔父さん(
スティーブ・カレル)。
てんでバラバラ、違う方向を見ていた彼らが、旅の中でいくつかの出来事にぶつかって挫折し、それを受け入れていくうちに、少しずつ心が寄り添いあって一つにまとまっていく様子を、大袈裟に盛り上げず、あえてシンプルに描いているところに、とても好感が持てました。
最初はもっと陽気なコメディなのかと想像していたので、意外にシリアスで静かな映画だったのはちょっと驚きでした。でも抑えた演出だからこそ、後半、家族の心が通い合って暖かくなっていく様子が、押し付けがましくなくて良かった気がします。
挫折したり、思い通りにならなくて運命を恨んだり。誰でも壁にぶち当たってすべてがイヤになる瞬間ってあるはず。でもそこから逃げずに「しょうがないや」って受け入れて、今この一歩からまず歩きだしてみる。そのときに、家族でも仲間でも恋人でも、誰か味方になってくれる人がいればきっと、人はまた笑うことができるんでしょうね。そんなことを改めてしみじみ感じました。
そして、型にはまらず自分らしく生きることが何より大事なんだと、この不器用な一家を見ながら思ったのでした。
失敗したり落ち込んでるときに特にオススメの一本です。