「プレステージ」ですよ。
←このポスターデザイン、良くないですか?!日本版より全然オシャレ。怪しげな手付きがなんともいいじゃないの。パッパッパヤッパー♪みたいな感じで(古すぎ&意味不明)。
この映画、なんでも最初は
ジュード・ロウと
ガイ・ピアースで映画化が進められていたという噂ですが、なんで変わったんでしょうね?
蓋を開ければ
クリスチャン・ベールと
ヒュー・ジャックマン。この二人で良かったです、私。ほとんど予備知識なしで見たんですけど、面白かったですよ、これ。(でも寝る人もいるかも)
ストーリーを簡単に紹介すると・・・
19世紀のロンドンで、売れっ子奇術師の
アンジャー(ヒュー・ジャックマン)がショーの途中で溺死します。
そしてそこに居合わせたライバル奇術師の
ボーデン(クリスチャン・ベール)が、アンジャーを殺した容疑で逮捕されてしまうのです。
二人は駆け出しの頃から因縁の間柄。見習い奇術師だった時代に、やはりショーの途中の事故で、マジシャンの助手だったアンジャーの妻が溺死した過去があり、しかもその死因は、ボーデンの過失によるものだと思われています。そのせいもあって、二人の間には長年の確執があり、互いのショーを妨害したりネタを盗もうとしたり、騙しあい出し抜きあい、生涯をかけて互いに勝つことに取り付かれるように生きてきたんですね。その執着の底深さに、周囲の人間は翻弄され、妻や愛人、仕事仲間たちも傷ついていくわけです。
映画全体にトリックが仕掛けられている、というか、最後まで見ると
「そうだったのかー!なんだもう一回見直して確かめたいぞー!」という気持ちにさせられるので、なんというか商売上手な気がします(笑)。実際二度見に行ってらっしゃる方もいるようですしね。分かります、その気持ち。いや、確認したくなるんですよ、ホントに。
ネタばらしできない内容なので、本当に感想が書きにくい映画です。時系列もわざと乱してあったりするし(監督が
クリストファー・ノーランだからね)、ちゃんと見てないと分かりにくいところもあったりしますが、私は130分飽きずに十分楽しめました。
なんといっても、二人の男の、「そこまでやるか!」という執念。一般ピープルからすれば理解不能な情熱(というか偏執狂的)で、人生のすべてをマジック(と、ライバルに勝つこと)に費やしてしまった、愚かで哀れだけどある意味アッパレな男たちの生き様は、呆れ果てつつも感嘆してしまいます。
「イデデデデ!!」という声が聞こえてきそうな感電シーン(ウソ)。ホントに19世紀?
ラストで明かされるオチですが、ヒュー・ジャックマン側は、ちょっと現実離れというかSFチックな展開になっちゃってるので、「えええーそれってアリですか?!笑」的な部分もあります。
クリスチャン・ベール側は、見ている途中で「もしかして・・・」と想像がつくので、びっくり仰天とまではいかないものの、やはり「何もあんたそこまで・・・まったくもう・・・」と、お姉さんちょっとホロッときたわよ的な徹底ぶりに恐れ入ってしまいます。クリスチャン・ベールの演技を注意して見ていると、勘のいい人は途中で気付くんじゃないでしょうか。彼、いい役者になりましたねー。地味なのに不思議な吸引力のある表情をするんですよね。底深い感じがするの。ヒュー・ジャックマンが、わりと分かりやすいハンサムマジシャンを演じているので、対比が効いていて良かったんじゃないでしょうか。
彼ら二人に絡んでくるのが、マジックのネタと装置を考える仕掛け人の
マイケル・ケイン。マイケル爺やとクリスチャン・ベールのツーショットを見て、「あれ、バットマンと執事だわ」とか思っちゃった。監督遊んでる?
あと、ヒュー・ジャックマンがある装置の発明を頼む科学者役が
デビッド・ボウイ。エジソンのライバルなんだって!ボウイ、なんか妙ちくりんなオヤジになってました。うぷぷ。
そして、女性陣ですが、3人出てくるんですね。ヒロイン役
オリヴィアには
スカーレット・ヨハンソン。アンジャーの妻亡き後に、マジックの助手として雇われ、愛人にもなる美女役。彼女も物語のキーポイントではあるのだけど、なんというか魅力がいまいち活かしきれてない感じでちょっともったいなかった。映画が始まっていいかげんしてからスカーレットが出て来るんだけど、その瞬間まで彼女がこの映画に出てること、私すーーっかり忘れてました(笑)。扱いも、ちょっと軽かったんじゃないかなー。美しいし妖艶なんだけど、スカーレットって柄が小さいから悪女風のインパクトのある役には意外と存在感を発揮しない気がするんですよね。もっと、あえて清楚な役とかやったほうが、もともと持ってる匂い立つような色気が滲み出て魅力的だと思うんだけどな。惜しい。でも、彼女も憎めない役でした。
意外にもスカーレットより印象に残ったのが、アンジャーの妻で前半に死んでしまう
ジュリア役の
パイパー・ペラーボ(↓下の写真の人ね)。スカーレットみたいなミステリアスさはないんだけど、快活な感じの親しみやすい美人なので、死んでしまうことで余計にけなげな印象が・・・。
ボーデンの妻サラの女優さんは、地味(笑)。でも、女性として見ているとちょっと可哀相な人生でしたね。やっぱ、こうなっちゃうのかなー、と。ボーデンに「愛してる」と言われても、「今日は本気ね」「今日はウソね」とかいちいち惑わされてるの。イヤですねー、こういうの。まあ惑わされて当然のオチでしたけど。
なんとなく、こういう映画を見ていると、男という生き物は、時に女には理解できない拘りと熱意と彼なりの信念で、ある方向に突っ走ってしまうのだなぁ、そしてそうなったら、女がどう頑張ってもそれを止めることはできないんだなぁ、としみじみ感じてしまいます。まあ、一般人の男性は、こんな生き方はしないでしょうが(笑)。
この主人公たちは、傍から見たらおバカかもしれないし、狂ってると言われるかもしれない。けど、たとえ滑稽だったとしても、そのようにしか生きられない一つの道を知ってしまってる人って、悲しいけどある意味究極の幸せ者とも言える気がします。全然うらやましくないけど(笑)。
ところでラストにチラッと映る水の中のアレは、最初意味が分からなかったんですが、ショーのたびにアレがいっぱい現れたってことですよね?怖いわ。悲惨だわ。違う実験に使えそうだけど(笑)。
全体を見終わると、セリフにもいろいろ伏線が張ってあったように思うので、尚更もう一度確認しなおしたくなります。ちなみに、私は冒頭のシルクハットの映像を見て、「これは絶対伏線だなっっ!!」と予想しておりました。なんか最近映画見てても、ついつい穿った見方しちゃうからダメね。
エンディングで流れる曲、「この声知ってるぞ」と思ったら
トム・ヨーク(レディオヘッド)でしたね。デビュー当時結構好きでした、この人(笑)。