「トゥー・ウィークス・ノーティス TWO WEEKS NOTICE」 2002年の作品。
ロマンチック・コメディ、いわゆる
ロマコメというジャンルが好きだ。(別名ラブコメとも言う。)
どうして私がロマコメを愛するかと言うと、笑いがあり、衝突があり、ほろ苦さがあり、甘酸っぱさがあり、最後は必ずスイートなハッピーエンドになるのが分かっている、揺るぎない安心感があるから。
ロマコメは見ている方もどこか余裕をもって主人公たちを眺めていられる。軽いストーリー展開の中に、自分たちの日常にもいくらでも転がっている普遍的なせつなさや優しさが籠められていて、見るたびに自分の平凡な人生すら愛おしく感じられるのだ。
そして見終わった後に、「ああ、私もちゃんと自分の気持ちに素直に生きよう」と、前向きな気持ちになれたりする。これぞロマコメの醍醐味。だからやめられないのよね。
で、肩の力を抜いて見られるロマンチック・コメディが大好きな私が、なぜか気になりつつも長いこと見ないままになっていた作品がこれ。
ヒュー・グラントと
サンドラ・ブロック共演の
「トゥー・ウィークス・ノーティス」。初共演なのが意外なほどのベストなカップリング(言い方を変えればあまりにベタな組合せ)の二人が主演だからこそ、ひょっとすると恐ろしく大味であざとい、チンケな恋愛モノなんじゃないかと勝手に勘繰っていた。でも余計な心配だった。ラブストーリーの定番のようなシンプルな作りながら、軽妙な会話で笑わせてくれてホロッとせつなく泣かせてくれる、まさに私好みの一本。そしてこの手の恋愛モノが、いかに主演カップルの相性が大事かを改めて知らしめてくれる作品でもあった。
ニューヨークの建設会社の若き社長であり、プレイボーイで軟派な
ジョージ(
ヒュー・グラント)。社会のために戦う正義感いっぱいの切れ者弁護士
ルーシー(
サンドラ・ブロック)が、敵対する相手であるジョージにふとしたことから顧問弁護士として雇われるのが物語の発端。実のある仕事がしたいのにままならない堅物ルーシーと、そんなルーシーにプライベートの相談事から服選びまでベッタリ頼りきってしまうジョージ。教育ママとダメ息子のようでもあり、長年連れ添った夫婦漫才でもあるような、正反対の凸凹コンビの二人。傍から見れば互いにないものを補い合ってベストな組み合わせに見えるんだけど、ルーシーはダメ男のお守り役にウンザリ、2週間後に退職すると宣言してしまう。が、そのときになって初めて相手への本当の想いに気付き・・・という、まあ先の展開がいとも簡単に読めてしまうストーリー。これよ、これ!ラブコメはこうじゃなくっちゃ!
ルーシーは仕事もできるし頭もいいし、隙のない完璧な秀才タイプで、色気もなし。だからこそ恋人にいつも逃げられてしまうお堅い女。サンドラ・ブロックはこういう役が一番はまる気がする。こういう堅い女は、どこか天然ボケでドン臭いんだけど、そこをヒュー演じるジョージがいいタイミングでフォローしてくれる。
一方で、軽薄な生き方しかできない優柔不断なジョージに手を焼きながら、姉さん女房のようにテキパキと面倒を見てしまうルーシーもまた、ジョージにとっては痒いところに手が届く相手。この二人、これ以上ないほどバッチリな組合せなんだけど、とかくこういうパターンの場合、本人同士はその相性の良さに気付いてなかったりするのね。(ちなみにペラッペラに軽いハンサムを演じさせたらヒューの右に出るものなし)
ジョージの元を去ると決めた後で、彼への愛に気付き始めるルーシーは、当然その思いを否定しようとする。ジョージは自分とは理想とするものも目指している目標も違うし、価値観が到底違う相手、しかもあんな情けないダメ男に自分が惹かれるはずがない、と。でも人を好きになるときって、相手が自分と同じ理想を掲げているとか、人として尊敬できるかどうかよりも、もっと単純に「この人のことが気になって仕方ない」というマジックが働くかどうか。堅物ルーシーはなかなかそれを認められなかったけれど、自分の後任弁護士としてやってきた赤毛美女(美女というにはちょっとビミョーだけど)とジョージが接近するのを見て傷つき、やっと自分の恋心に気付くという展開。そしてジョージもまた、ルーシーの存在の大きさに気付き、お気楽だった自分自身の生き方に疑問を感じるようになる。ああ、ラブコメの王道!!
この作品の成功の要因の大部分は、何と言ってもサンドラとヒューの相性の良さだと思う。会話のテンポもよく、小気味いいやり取りで笑わせてくれるし、おとぼけ顔のヒューはサイコー。横で怖い顔しているワニ顔のサンドラ姉御もサイコー。
ヒュー・グラントと言う人もラブストーリーには欠かせない俳優だけど、根強い人気のある
「ノッティングヒルの恋人」が、実は私はさほど好きではない。なぜあの作品にいまいち乗れなかったかというと、私の目から見てヒュー・グラントと
ジュリア・ロバーツの相性があまりいいように見えなかったからなのだ。実際の相性というのではなくて、映像で見たときのカップリングのリアリティというか、説得力。(あくまで私の主観なので、お好きな方ごめんなさい)
役者の相性ってすごく大事だと思うんだけど、例えばジュリアは
ブラッド・ピットと共演した
「メキシカン」もあまり相性がいいように見えなかった(ちゃんと見てないけど)。恋人じゃなくて兄妹か姉弟みたいで。ジュリアは
リチャード・ギアとか
メル・ギブソン、
ジョージ・クルーニーみたいな「オジサン」とのほうが絶対に画的な相性がいいタイプだと思う。
で、話が脱線したけど、今作のヒューとサンドラの場合、顔のタイプが全然違うので一見「合わないかな?」とも思うんだけど、実際に並んで動く姿を見ると非常にいいアンサンブルを醸し出す組合せ。時々イカツイ(失礼)サンドラがとても可愛らしく見える瞬間すらある。しかも役柄と本人達のイメージがぴったりなので、非常に居心地のいい等身大の恋愛モノを見ている気にさせてくれると思う。
ルーシーが一方的にジョージの面倒を見ているかと思わせておいて、実はルーシーもジョージにお守りをしてもらっているところなんてすごく微笑ましい。例えばレストランで食事するときに、ごく自然にルーシーの嫌いな食べ物をジョージが代わりに食べてあげるエピソードなど、
「あんたたち、どう見ても誰も割って入れないベストパートナーだよ!」と本人達の肩をバンバン叩いて教えてあげたくなるほど。いいですね、こういう組合せ。私も嫌いなものを代わりに食べてくれる男の人がいいなー(笑)。
ラスト、本編が終わったかと思いきや、おまけのように表れる短いシークエンスがまたGOOD。ヒューヒューってば、ホントいい味出してるわ。
主演俳優2人の余裕の演技とベストなコンビネーションを楽しみつつ、ニューヨークの風景もさりげなく味わえる「トゥー・ウィークス・ノーティス」。単純だけど、こういう作品がもたらす幸福感を侮ってはいけない。何度見ても飽きずに楽しめる映画って、むしろこういう軽いラブストーリーなのかもしれないなぁ。
↓ここのシーンのヒューヒューの動きは、かなりカワイイ。