世の中、右も左も私もあなたも
「スターウォーズ」感謝祭な今日この頃。
当分は他の何を見ても、ついつい「スターウォーズ」に帰還してしまいそうで、嬉しいようなせつないような。というわけで、今回はその「スターウォーズ」から飛び出た『ザ・ハリウッド・ヒーロー』
ハリソン・フォードの、超ヒット作をとりあげようと思う。何を隠そう、私は足掛け18年、この人のファンだ。テレビで
「刑事ジョン・ブック」を見て以来、彼の映画は欠かさず劇場に見に行っている。リアルタイムで「SW」や
「インディ」も見ているので、馴染んでいる期間を言えば、27年になる。しかし最近ちょっとヘタレ気味のため、一番最近の
「ハリウッド的殺人事件」は未だに見ていない。ちょっとファン失格の兆しが見え始め・・・。(ごめんねハリー)
「逃亡者 THE FUGITIVE」 1993年の作品
ハリソン・フォードというと、アクションヒーローとしてスターとなり、その後
ピーター・ウィアー監督の
「刑事ジョン・ブック」や
「モスキート・コースト」で演技派への転向を図ったと思われているようだけど(実際ジョン・ブックで初オスカーノミネート)、私的にはハリー(といつも呼んでいるので、よろしくね)のターニングポイントは、この「逃亡者」だと思っている。
それまでもハリーは観客動員できるヒーローとして認知されていたけれど、正直ハン・ソロやインディ以来、いまいちインパクトに欠ける作品が多かった。けれどもこの
「逃亡者」で、彼はたぶん初めて「悲しいヒーロー」を演じ、映画は大ヒットを記録した。
妻殺しの汚名を着せられ死刑宣告までされた
Dr.リチャード・キンブル。彼は執拗に追ってくる
連邦保安官のサム(トミー・リー・ジョーンズ)から逃れ、真犯人の片腕の男を捜し続ける。ここでのハリー演じるリチャードは、無実の罪を背負い、徹底的に孤独だ。笑顔はほとんどなく、痛みに顔をしかめ、寒さとひもじさに震え、妻を失った絶望に涙する、生身の人間の弱さが前面に表れている。その必死さが、スクリーンを通して、ダイレクトに伝わってくるからこそ、「逃亡者」はただのエンターテイメントではなく、心に訴えかける作品になっているのだと思う。
ハリソン・フォードという人は、スタントマンが横にいても、ほとんど自分でアクションシーンをこなしてしまう俳優として知られているけれど、この作品では撮影初期に足の靭帯を痛め、そのまま撮影を強行したという。なので、この映画ではほぼ全編にわたり、ハリーがびっこを引いている様子が分かる。追っ手から命がけで逃げるシーンでも、走る姿がぎこちないのだ。ああ痛そう可哀想!!私はブルース・ウィリスがどんなにボコボコに殴られてもまったく何も感じないが、ハリーが殴られると本当に痛いような気がしてくる。ファンの贔屓目もあるけれど、実際ハリーは、ちゃんと痛さや苦痛を観客に伝えられるアクションを見せる俳優だと思うのだ。
「逃亡者」のもう一つの魅力は、やはり
リチャード・キンブルという主人公の描かれ方。自分がどれほど危ない状況に置かれようと、目の前に苦しんでいる人がいると、見過ごすことができない医師としての(人としての)使命感。なんだかいかにも優等生的な感じがして胡散臭いが、ハリーが演じると本当にそういう心優しい医師なんだろうな、と不思議と説得力が感じられるのだ。
一番好きなのは、片腕の真犯人について調べるために、掃除夫になりすまして潜り込んだ病院でのシーン。たまたま怪我で運ばれ担架に乗せられた子供のレントゲン写真を見て、誤診を見抜き、カルテを書き直して救急治療室に勝手に運んでしまうキンブル。あのシーンは、キンブルの人物像が一番よく表現されていて、何度見ても胸がいっぱいになってしまう。
ちなみにこのシーンではジュリアン・ムーアが女医として登場する。出演シーンはとても短いが、やはりジュリアン姉さんは、印象に残る仕事をしてます。で、当初の予定ではキンブルとこの女医のロマンスも盛り込まれるはずで、実際そのシーンの撮影も行われたらしいが、結局すべてカットされたそうだ。彼女の出演シーンが減ってしまったのは残念だけれど、映画として見たときに、ロマンスの部分は削って正解だったと思う。
ハリーの映画では、この「逃亡者」と「エアフォース・ワン」が私の中では甲乙つけがたい傑作なんだけれど、彼の持つ独特の「悲哀感」を感じられるという点で、「逃亡者」に軍配を上げたいと思う。