今までに見た映画の中で、特に思い入れの強い作品を時々ピックアップしていこうと思う。
(ある程度公開から年数の経った作品をとりあげるつもりなので、多少のネタバレは含むかも?)
で、第一弾はこちら。
「ガタカ GATTACA」 1997年の作品
《残酷なまでに美しい未来・・・。愛だけでは君に届かない。》
そう遠くない未来が舞台。
自然分娩で生まれた欠陥だらけの
「不適正者」=神の子と、DNA操作であらかじめ優秀な頭脳と肉体をもって生まれてくる
「適正者」が区別される社会で、不適正者でありながら、宇宙飛行士を夢見る青年
ビンセント(イーサン・ホーク)が主人公。ビンセントは、宇宙飛行士養成組織「ガタカ」に潜り込むため、適正者でありながら事故で車椅子の生活を送るエリート、
ジェローム・ユージーン(ジュード・ロウ)と取引する。彼の身分を買い取り、ジェロームに成りすます。ユージーンは自らの血液、尿、体毛のサンプルをせっせと採取してはビンセントに提供する。ビンセントはそれを身につけ、周囲を欺きながら、着々と宇宙への夢を実現させようとするが、ある殺人事件をきっかけに、彼の正体が発覚しそうになる。
イーサン・ホークはその凡庸なルックスが、観客の共感を呼び起こしやすい俳優だと思う。
ビンセントの、「不適正者」の烙印を押された悔しさ、あきらめきれない夢への悲壮なまでの努力が、イーサンの普通っぽさのおかげで真実味を増す。
「なぜ僕の邪魔をする?僕にできることを決め付けるな!」と叫ぶ彼の悲痛な思いは、胸を打つ。それは、映画を見ている私たちもまた間違いなく、「不適正者」の側だから。彼が必死になればなるほど、見ている私たちまで同じ痛みを共有しているような気がしてくる。
ジュード・ロウは、あまり好きな俳優ではないけれど、この作品と「リプリー」の彼は素晴らしかったと思う。才能や美貌や、人よりはるかに恵まれたものを持ち合わせながら、それを持て余して人知れず苦しむ。イーサンとは対照的な選ばれし者の苦悩がよく似合うルックスだからだろうか。ユージーンが車椅子から下りて、動かない足を引きずりながら階段を這い上がるシーンは必見。ここは別に泣かせる場面ではないけれど、このシーンでのジュード・ロウのあえて表情を崩さない演技が、逆に壮絶さを漂わせて胸が苦しくなる。
そして映画のラストでの彼のある決意。そうするしかなかったの・・・?
私は涙がとまらなかった。
物語の最後に、宇宙へと旅立つビンセントを送り出す
検査技師(ザンダー・バークレー)の表情がとてもいい。すべてを見通したうえで、黙ってビンセントを見送る彼の微笑みは、観客の私たちの表情と似ているかも知れない。この検査技師もまた、ユージーンと同様、ビンセントの夢の実現に自分の思いを託したのだろうか。
ラストシーンは本当に悲しくて美しい。そして不思議と希望が見える。
余談:ユマ・サーマンは、そのアンドロイド的美貌が近未来モノには合うのかもしれないが、いかんせん添え物的な役になってしまっているのが残念。イーサンとも離婚しちゃったし。
イーサンはジュリー・デルピーのが似合ってると思うけどいかがでしょ?