たまには本の感想でも書きましょう!
まずは、
恩田陸さんの
「Q&A」。私、恩田さんの作品って一冊も読んだ事なかったんですが、これは「面白い」とあちこちの書評にあったので、気軽に手に取ってみました。
うーん・・・。怖い。じわじわ怖い。
ストーリーはというと・・・。
とある郊外の町で起こった、大型商業施設(ショッピングモール)での大惨事。
たくさんの死傷者を出したその「事故」は、警察や消防がいくら調べても、原因が分からない不可解な事故。現場に居合わせた被害者たちの証言もそれぞれ食い違っていて、誰も何が直接のきっかけだったのかはっきりとは分からないまま。ただ、その場に居合わせた人々は、一種のパニック状態(?)に陥って我先に逃げようとし、結果大勢の犠牲者が出てしまったということらしい。一体この事故は何だったのか?質問形式で、小説は進行していきます。
質問形式、つまりQ&Aという形で、様々な生存者、目撃者、関係者たちの証言が淡々と積み重ねられていく方式の小説。読み進むうちに、この「事故」のきっかけはそもそもなんだったのか、単なる事故だったのか、何かの陰謀だったのか、集団パニックに過ぎなかったのか、不可解な気持ちがどんどん増大していきます。
もしかしたらこういうことなの?という仮説は立てられるものの、それが真実かは最後まで明らかにされないので、読み終わってスッキリする小説ではありません。この小説が怖いのは、事故の原因そのものじゃないんです。こういう事態が起きると、人はどういう影響を受けるのか、その波及の仕方のバリエーションとその不気味さ、そこが静かに描かれている点だと思います。小説が後半に進むにつれて、出てくる証言者も、どこか壊れていたり病んでいたりして、その姿にゾッとしたり。(ちなみに私が特に怖かったのは、タクシー運転手が出てくるパート。もしかしたら本当にこういうことってあるかも!?なんて想像したりして)
そして、何が一番怖いって、この事故が起こる前から、みんなそれぞれちょっとずつ歪んでいて壊れてるのかもしれない、と思わせるところなわけです。人は皆、どこかしら病んでいて、それに気付かずに生きている。それがこのQ&Aによって露わになっていく。そういうからくりがまた面白くもあり、ヒンヤリと怖くなる部分でもありました。
もう一冊は、
村山由佳さんの
「星々の舟」。
実は村山さんって私苦手だったんですよ。デビュー作で非常に売れた
「天使の卵」の透明すぎる雰囲気が自分には合わなくて。でも、この「星々の舟」は直木賞受賞作だと言うし、ちょっと風合いも違うような気がしたので、思い切って読んでみました。
読んで良かったです。正直、直木賞にはちょっと弱いんじゃないかな、などと生意気にも思ったりしましたけど、私は結構好きな作品です。
家族を描いた小説なんですね。でもまとまりのある仲良し家族なわけじゃなくて、結構みんなバラバラで問題を抱えていて、仮面家族みたいな雰囲気もある(笑)。みんないい年だから家庭を持ったり地方に移り住んだりしていてそれぞれに生きているわけだけど、心に深刻なわだかまりを抱えていて、帰ろうにも帰れない事情があったりする。
厳格で横暴な大工の父親と、反発する息子(次男)。彼と禁断の恋に落ちる妹。いつも道化役を買って出て本心を明かさない、不倫中の末娘・・・。幾人もの登場人物が、胸にひた隠した苦しみや痛みを持っていて、でもそれをどこか生きる糧のように抱きながら日々を送っていく。第三者から見た姿と、本人の心根はまるで違っていたり、人間の多面性も丁寧に描かれています。
絵に描いたような分かりやすい幸福は手にすることができなくても、傍から見れば不幸だとしても、本人にとってはそれも幸せのカタチなのかもしれない、だったらそれでいいんじゃないの?と、そんなふうに思える小説です。私はこういう考え方はわりと共感できるほうなので、しみじみと読み終えることができました。
各章ごとに主人公が代わる形式なので、人それぞれ好きなパートは分かれると思います。私は個人的には、やはり兄と妹で愛し合ってしまう二人のそれぞれの章が引き込まれました。特に妹の章は、なんというか迫力すら感じましたね。電車で読んでてちょっとドキドキしちゃった。
なので、その後の章、農業に安らぎを見出す長男のパートとかは、やはりちょいと物足りなかったけど(笑)、そこが好き!というレビューも見かけたりしたので、本当に人それぞれだと思います。自分自身に照らし合わせて読むんでしょうね、みんな。
というわけで、最近面白かった小説二冊をとりあげてみました。
さて、次は何を読もうかな?