通勤電車の中での暇つぶしに・・・と思って読んだ、
安藤健二氏の
「封印作品の謎」。
なかなか興味深い内容の一冊でした。
過去にテレビや映画、本として世に送り出されながら、ある理由により「封印」され、二度と日の目を見なくなってしまった幾つかの作品について、その謎に触れるというノンフィクションもの。
取り上げられているのは、子供向けドラマの
「ウルトラセブン」、
「怪奇大作戦」、映画
「ノストラダムスの大予言」、漫画
「ブラック・ジャック」など。
「ウルトラセブン」に関しては、第12話の
「遊星より愛をこめて」というお話が、今ではアンタッチャブルの封印作品として葬られているのだそうです。何故かというと、12話に出てくる
スペル星人という怪獣のルックスがマズイんだとか(一応、本には写真が紹介されています)。
ルックスそのものが、何を連想させ、どう形容されているかが詳細に語られていて、それに対して抗議運動を起こした団体があり、テレビ局が自粛せざるを得なくなったいきさつなどが、詳しく紹介されています。
また、
「怪奇大作戦」というドラマの第24話は
「狂気人間」というタイトルで、もうこのタイトルからして「ヤバイかも・・・」と想像がつきますが、やはりストーリーの展開上よろしくない表現があって、抗議を受けることなり、しかもそこにはとても深い闇が隠されているようで・・・。なんだか読んでいてちょっと怖くなります。
手塚治虫先生の
「ブラック・ジャック」は、医療的な用語(「ロボトミー」)が間違った使い方をされ、それが発端となって、やはり大きな抗議事件へと発展し、手塚先生が謝罪をして自ら作品を封印したり手直ししたりということになったようです。現在でも収録されずに完全に封印状態にあるお話が2つあるのだとか。
ちなみにこの本で取り上げられた作品群の中で、私が一番興味をそそられたのは、
丹波哲郎さん主演の
「ノストラダムスの大予言」ですね。見たいー。見たいよー。
作り手側は何らかのメッセージを込めて、決して悪気などなくむしろ問題提起する意味で作品化したつもりなのが、見る側によっては「冒涜」や「人権侵害」と映ってしまう。そして騒がれれば、テレビ局や出版社などは、過剰なほど神経質になって作品そのものを封印してしまう。そうすると、今度はマニアやファンたちがその幻の封印作品を追い求める。そういう図式なのですね。
昔は結構おおらかに「タブー」とされるような表現のものがバンバン世に出ていたような気がするんですが、実際はこういった「抗議→封印」ということが繰り返されていたのかもしれません。
でも最近はむしろ神経質すぎないかな?と思うんですけど、どうなんでしょう?
いつだったか、
矢沢永吉さんの出ているCMで、
「どこ行ったって混んでるんだから」と言って「わざわざ出かけるのやめようよ」的内容のものがありましたけど、あれもたしか抗議が来て封印されたんでしたよね?私なんてアバウトな人間なので、「そんなに目くじら立てることなのかな」と思ったものだけど、例えばレジャー産業の方たちからすれば、あのCMはとんでもない内容に映ったのでしょうか。
逆に、以前保険のCMで某俳優さんが
「病気になってみるもんだなー」とかいうニュアンスのセリフを発するものがあったんですが、私はそれを見て「これはヤバくないか?」と心配していたら、あっという間にそのCMもセリフが変えられていました。あれは絶対抗議がくると予想していたんだけど、やっぱりそうだったのかしら。
「何もそこまで過剰反応しなくても・・・」というものから、「なんで製作するときに、誰もおかしいと思わなかったの?」と神経を疑うような悪趣味なタブー作品までいろいろあるものですね。
でも人間、「タブー」とされているものには、なぜか好奇心を掻き立てられるものであり、だから私もこの本を読んでしまったわけですが。
ちなみにこの本の巻末に載っている、
「現在では視聴困難になっている著名な作品のリスト」を眺めていたら、
「キャンディ・キャンディ」が挙がっていたので驚きました。原作者と漫画家が裁判で争っていたのは知ってたけど、まさか単行本も絶版状態、再放送も不可になっていたとは・・・。普及の名作「キャンディ」が封印されるなんて。オトナたちのエゴが原因で、元少女たちの夢を奪わないでほしいものですわ。
ところで。
メグ・ライアン主演の
「フレンチ・キス」のDVDが絶版状態のままなのは何故ですか?あれ好きだったんだけど、なんで再発売されてないのでしょう。まさか・・・封印?!!(笑)