この前、仕事中にバタバタッと忙しくなって、しかも一人で一気に対処しなくてはならなかったために、ちょっとした間違いをしました。ほんのケアレスミス。もちろん反省し、以後気をつけようと思いました。ただ、私も人間なので、キャパオーバーになると何かを間違えたりすることはよくあります。というか、結構そそっかしいところがあるタイプだし、どこかでポコッと抜けるところがあるので、「あら、私ったらまたやっちゃったわ」くらいの気持ちだったのです。
ところがクライアント先の上司に
「きみらしくないなぁ」と言われて複雑な気分になりました。非難しているのではなく、「どうしたの?きみがこんなつまんないミスするなんて」という言い方でした。「すみません」と謝りながら、心の中で「そんな完璧な人間じゃないんだけどなぁ」と苦笑いしてしまいました。
私はこの、
「らしくない」という言葉が昔からあまり好きじゃないのです。
この言葉を言われると、「え、私いつもこんなんですけど。」って心の中で反論したくなるから。
いつもすましてると言うか、すかしてるせいなのか知りませんが(笑)なぜか「しっかりしている」ように見られることが多いのです。でも実際は失敗も多いし、どん臭い面もあるし、基本的にズボラ。だからちょっとしたミスをするのも私的にはよくあり得ること。だけど他人からすると「あなたらしくない」になってしまう。
「あなたらしくない」「きみらしくない」って言う言葉、結構頻繁に使われますよね。
でもこれって言ってる本人はそんな気がなくても、言われた方からするとあまり気持ちのいい言葉じゃないんですよね。今の自分の行動、思考に対して否定的な言葉であるのは間違いないし、いつもと少し違う態度をとることに対して「そんなの本来のあなたじゃないよ」とブレーキをかけられる言葉でもある。親切心で言ってくれていたり、普段の自分を良く評価してくれている証拠なのかもしれないけれど、言われたほうからすると、「え?こういう私はダメなの?こういう面は私のキャラクターとして受け入れてもらえないの?」と感じてしまう。
そもそも「私らしくない」ってどういうことなんでしょう?
中学生の頃、周辺であった話です。ある人がトラブルに巻き込まれて悩んでいたらしく、心配した先生が放課後その人と話し合いをしました。そのとき先生はその人に対し、
「こんなこと、きみらしくないぞ」と諭したのだそうです。
その夜、その人は自ら命を絶ってしまいました。
何がその人をそこまで追い詰めたのかは分からないし、最後に話したその先生の胸中を思うと胸が痛みます。でもその話を聞いたとき、私ちょっと思ったんですよね。「きみらしくない」なんて言葉、その人は聞きたくなかったんじゃないかなって。悩んでいるときに欲しいのは、諭す言葉より、全面的に受け入れてくれる「大丈夫だよ」っていうような言葉なんじゃないかと。
私は人に対して「○○さんらしくない」という言葉は極力使いません。だってその人のことなんて100%分かるわけがないし、誰にでも他人に普段は見せない一面があるはずで、一概に「あの人はこういう人だ」と決めつけることはできないから。他人の人格をさも分かったような気になって「あの人らしくないよね」なんて言うのは、なんだか傲慢な気がするのです。
と、マジメに書きつつ思い出したのが、数年前にハリウッドでゴシップ欄を賑わした
メグ・ライアンと
ラッセル・クロウの不倫騒動。あのときメディアは「不倫なんてメグには似合わない」と書きたてたし、私も友人と「メグ・ライアン、どうしちゃったの?血迷ってない?」と話したものです。
でも先日、メグ・ライアンがセクシャルで情熱的な本能を秘めた蠍座女性だと知って、なんだかちょっと納得したような気持ちになりました。メグ本人にしてみれば、「不倫なんて似合わない」という言葉も、過激な性描写が話題になった
「イン・ザ・カット」出演をあれこれ言われることも、余計なお世話以外の何物でもなかったのかも。
その人の本質、その人の内面なんて周りが勝手に推し量ることはできなくて、当の本人にしてみれば「らしくない」どころか「これも私よ!」というところなのかもしれませんよね。
「らしくない」。難しい言葉だなって思います。