10代の頃から映画が大好きで、学生から社会人になりたての頃はまさに浴びるように見まくっていた。本数を重ねるにつれ、だんだん素人なりに目が肥えていき、好みも確立されていく。故に手当たり次第になんでも見るってことがなくなって、いつのまにか相当選り好みするようになってしまった。なのでここ数年は新作にしろ旧作にしろ、見る本数がめっきり減ってしまっている。「これは絶対見たい!」と心から感じる映画が、昔に比べ本当に少なくなってしまったのだ。(枯れてる私)
そういう事情もあるかもしれないけれど、近頃、昔見て面白いと思ったもののそれっきりになっていた作品を、今改めて見直す、ということを時々している。旧作のDVDが廉価版で並ぶ近頃は、気軽に「思い出のあの映画」を手に取りやすくなった。
見た当時はとても印象に残った作品、今見直したらどう感じるのだろう?ちょっとドキドキしながら今回見たのが、
アル・パチーノの
「シー・オブ・ラブ」。
たぶん私がこれをビデオで見たのは90年代前半。ニューヨークが舞台のいわゆる「
エロチック・サスペンス(笑)」というジャンルでしょうか。昔、この手の映画多かったよね、エロチック・サスペンス。(なかなかいいネーミングだ。)
犯罪都市として名高かった頃のニューヨークを舞台に、離婚歴のあるベテラン刑事の
アル・パチーノが連続殺人事件を捜査するストーリー。相棒が
ジョン・グッドマン(相変わらずいい味だしまくり。しかも髪の毛フサフサ)。
新聞に恋人募集の広告を出していたプレイボーイばかりが、裸のままベッドの上で銃殺される事件が続く。なぜか被害者の部屋では
「シー・オブ・ラブ(愛の海)」という曲のレコードがいつも流されている。パチーノたちは、被害者の出した恋人募集広告を見てアプローチしてきた女たちの中に犯人がいると考える。その第一容疑者が、
エレン・バーキンなのだけど、まあお約束どおり、パチーノさんは「危ない」と危惧しつつ、バーキンさんと欲望の海へ、呑み込まれ溺れてしまうわけさ。(じゃないとエロチック・サスペンスにならんのだ)
サスペンスとしては、まあまあ。それほど凝ってもいないし、こんなもんかなというレベルでしょうか。(実は二度目の鑑賞のくせに、ストーリー展開も犯人も全く覚えていなかった!)私はサスペンスとしても結構楽しめたけど、思いっきり酷評してる人も多いみたいですね。(そういえば肝心の「シー・オブ・ラブ」のレコードについても納得できる謎解きがなかったな・・・)でもこの映画は、サスペンスの部分よりも、パチーノとエレン・バーキンの組み合わせを楽しむ映画なのではないかと思う。
パチーノさんはやっぱり上手いと思います。仕事はバリバリだけど、女房に逃げられ、神経質で孤独なくたびれた中年の悲哀を漂わせ、小さい体にかっこ悪い
おパンツ姿も見せつつ、熱演しております。(ていうか、パチーノ本人がこの当時キャリア的にちょっと停滞していた時期で、このへんで復活したんじゃなかったけ?)
で、何と言ってもこの映画の見所はエレン・バーキン姉御でございます。いや、セクシーです、ほんとに。なんたって名前がいいじゃん
「エレン・バーキン」だよ。バーキン姉御は顔は
リー・トンプソンをもっと崩した感じのファニー・フェイスで、正直美人ではない。なんというか
ニューハーフっぽいのだ。でもスタイルが良くて、非常に色っぽい&カッコイイ。(でも今回見直したら、最近のサイボーグ並にスタイルのいい女優陣を見すぎたせいか、当時ほど感嘆しなかった。恐ろしいことだ。)最初は
「なんかヒロインのわりにこの人の顔すごいな」とか失礼なこと思っちゃうんだけど、見てるうちに、くしゃっとした笑顔がチャーミングだし、ラブシーンでの迫り方は男前だし、それでいて
タイトスカートの着こなしがすんばらしくセクシーなので、すっかり魅了されてしまう。あのね、この人のタイトスカートのヒップラインはマジで色っぽいよ。女たるもの、あれを目指さないといかんね!と、唸ってしまった。
サスペンス部分は弱いものの、主演2人の魅力と、ニューヨークの街並み、孤独を抱える人間同士の心のぶつかりあい、そしてジョン・グッドマンのナイスガイぶり、と見所は結構多い。(売れてない頃の
サミュエル・L・ジャクソンが、チョイ役で出てるのも注目!)
それと、映画そのものの出来うんぬんよりも、細かい演出とかセリフ、映画の作り方そのものが、この時代ってすごく丁寧な感じがして、私は好き。物語の本筋に関係ない些細なシーンの描写がひとつひとつすごくいいのだ。むしろ映画ってそういう小さな印象的シーンの積み重ねが大事な気がするのよね。
・・・でも、この映画、世間的にはいまいち評価が高くないのが私的には不思議。たしかに派手じゃないし、名作とも言いがたいけど、私は面白いと思うんだけどな~。(当時わりと仲の良かった同僚の男の子が、この映画がすごく好きだと言っていて嬉しかったのを思い出した。)
「絶対見て!」とは言わないけど、もし何かの機会があったら、ちょっと見てみてほしい掘り出し物映画、じゃないでしょうか。女子の皆さんは、バーキン姉御のタイトスカートの着こなしだけでも一見の価値あり!
ラストシーンが私はすごく好きだ。エレン・バーキンを必死で口説きながら追いかけるパチーノ。ニューヨークの雑踏の中で撮影されたシーンなのだけれど、途中、通行人がパチーノに思いっきりぶつかって、パチーノさん吹っ飛ばされそうになるも、めげずにバーキンに駆け寄って口説き続けるっていう部分があるんだけど、あそこはアドリブなんだそう。たまたま酔っ払いの通行人がいて、撮影に気付かずパチーノにぶつかってきたらしいんだけど、彼はそんなアクシデントすら演技に生かして撮影を続行したんだそう。やはりさすがの役者魂?!
エレン・バーキンといえば
「シエスタ」もある意味印象に残っている映画。元夫の
ガブリエル・バーンが共演、他にも
マーチン・シーン、
ジョディ・フォスター、
ジュリアン・サンズ、
イザベラ・ロッセリーニと、ウソみたいに豪華な顔ぶれの、しかし解読困難な不思議系映画だったっけ・・・。