台風が来る!と、テレビが騒いでいる。地震の次は台風かい。それでまた電車が止まるのかい。明日仕事行きたくないよ~~。いっそ朝から電車止まってくれれば・・・。
そんなことはさておき。今日はあまりメジャーではない映画のご紹介です。といっても、公開当時アメリカでは興行成績1位を記録して結構ヒットしていた作品なんだけど、日本ではひっそり短期間の公開に終わったような記憶がある。でもこれが意外に掘り出し物の作品なのだ。
「恋はデジャ・ブ Groundhog Day」 1993年の作品。
主演はゲンナリ顔で笑いを取る男、
ビル・マーレイ。相手役に
アンディ・マクドウェル。監督が「ゴーストバスターズ」でビル・マーレイと
ダン・エイクロイドと共演していた
ハロルド・ライミス。(本作では医者の役でチラッと出演。図体のデカイ人だ!)
それにしても。
「恋はデジャ・ブ」という日本のタイトル、激しくいただけません!
原題の
Groundhog Dayというのは、
2月2日(聖燭節)のことを言うそうで、ペンシルバニア州では毎年この日に冬眠から目覚めた
ウッドチャック(もぐらみたいなの)に春の訪れを占わせる(?)イベントが行われるのだそう。
ビル・マーレイ演じる性格の悪い
天気予報官フィルが、
プロデューサーのリタ(アンディ・マクドウェル)とカメラマンとともにそのイベントの取材に訪れるのが物語のはじまり。
フィルは退屈でどんくさい田舎行事にウンザリしていて一刻も早く都会に帰りたいのだけれど、吹雪のせいで足止めを食らい、田舎町にもう1泊する羽目になる。ところが翌朝ペンションで目覚めると、なぜか昨日と同じ2月2日の朝になっていて・・・。
何度目覚めても毎日同じ日(Groundhog day)を繰り返してしまう男の悲劇的コメディなんだけど、なんせ繰り返しているのはフィル一人だけ。毎日同じ道で同じ人物に出逢い、同じ出来事が繰り返され、自分だけが2月2日から抜け出せないのだ。
最初は絶望し、みるみるゲッソリしていくフィルだったけど、そのうちどうせ同じ繰り返しならそれを利用して好き勝手しまくろうと思いつく。で、ナンパに精を出し、大金を盗み、車をぶっ飛ばして器物破損とやりたい放題。だってどんなに悪いことをして留置場に放り込まれても、翌朝になればまたペンションのベッドで2月2日の朝に目覚めるのだ。
そんな無敵のフィルなんだけど、どうしてもリタの心をつかむことができない。あの手この手で来る日も来る日もアタックをやり直すのだけれど、リタには姑息なテクニックが通用しないのだ。やがて疲れ果て、同じことの繰り返しに疲れたフィルは、今度はひたすら毎日自殺を繰り返す。感電死を試み、車に轢かれ、ビルから飛び降り、車で崖からダイブする。それでもまた朝になると、2月2日がやってきてベッドで同じように目が覚める。
そしてフィルはいつしか2月2日を楽しむことを覚え始める。今までやったことのないことに挑戦し、町の人達とかかわり始めるのだ。なんせ時間だけはやたらにあるもんだから、ピアノを覚え、氷で彫刻まで作り、しかも腕はプロ級(ホントかよ)。それだけではなく、毎日(同じ日に)町のあちこちで起きるアクシデントを未然に防いだり、人助けをしたり、今までまったく持ち合わせていなかった「優しさ」の精神に目覚めていくのだ。そのあたりの描写はあくまでライトなコメディータッチを通しているので、嫌味じゃない。なんたってビル・マーレイだし。(笑)
また、ホームレスのおじいさんの命を救いたくて何度も助けようと試みるけれど、人の寿命という運命だけはフィルにも変えることができない。その無力感にうちひしがれる姿は結構泣ける。
この映画は自分でどうにもできない運命のいたずらに翻弄された男が、自分なりの方法でその運命を楽しみ、生きることの本当の幸せに気づくことがテーマになっている。自分だけが大物だと思い、周りを見下して生きてきたフィルが、ありふれた日常の中にこそ、本当に豊かな喜びがあると知る。そしてそのときにやっと、リタの心をつかむことができる。
彼がリタに呟く言葉
「明日どうなろうと将来どうなろうと、今この瞬間は幸せだ」。これこそ毎日の生活の中で感じる最高の喜びだと思う。
ビル・マーレイの芸風って、こうやって見てると
トム・ハンクスとちょっと似ているかもしれない。私はビル・マーレイのほうが好きだけど。あと、この映画は監督のセンスなんだろうけど、脇役や画面に映るエキストラ的端役まで、いちいち腰の砕けるようなトホホな笑いのセンスがちりばめられていて、私はかなり好物です。(保険セールスマンのネッドは、かなりキテます。)そしてライミス監督、たぶんものすごく優しい人なんだと思う。この手のハートウォーミングコメディというジャンルでは、アメリカ映画はダントツでしょう!
今目の前にある瞬間をめいっぱい楽しむ、その積み重ねが究極の幸せなのだと気づかせてくれる、なかなか粋な映画です。おすすめ!(CDショップでDVDが廉価版で出ているのに驚いた!)
↓春を占うウッドチャックってこの子よ。もこもこしてるの。